オフィスレイアウトのこんなイベント

自分は窓際の方のソファへ回り、その中央に腰掛けた。 髪は真っ白・顎にも僅かに讃がある。
年齢はいくつくらいだろう。 六十よりはずっと上に見える。
七十歳くらいか、あるいはもっと上かもしれない。 Y子さんが若く見えることもあるが、予想していたよりも年輩だった。
ただ、メガネの奥からじっと私たちの方を見つめている、その眼光はなかなかに鋭い。 「そうですか、君が銀河不動産のTさんですか」Mさんは言った。
声は低音で響く。 発音も鮮明で若々しい。
デスクの右に大きな黒いソファが置かれている。 私たちはそちらへ案内された。
「はじめまして、Tでございます。 お招きいただきまして、どうもありがとうございます」私は挨拶をした。
「奥様には、いつも大変お世話になっております。 こちらは、妻のT子です。

「はい、今後ともよろしくお願いいたします」私はもう一度頭を下げた。
「家内から、よく貴方の話を聞いています。
一度会いたいと思っていました。 まあ、私も長くないですから、元気なうちに会っておかないとね」「いえいえ、そんな、とんでもない」私は苦笑した。
「あの、私も是非一度お目にかかってご挨拶がしたいと考えておりました。 私の運が向いてきたのも、元はといえば、奥様からあの部屋をお借りすることになった、あれがすべてのきっかけでした」。
「ほう…、そう思われるのですか?」Mさんは、笑顔になってソファの背にもたれかかった。 「きっかけか…、うん、なかなかね、人間、きっかけに気づかないものなんですよ」「私も、全然気づきませんでした」「日々、きっかけはある。
石ころのように、道すがら、どこにでも沢山落ちているものです。 たまたま、それが自分の足に当たって、蹴飛ばしてしまう。
立ち止まって、小石がころころと転がるのを眺める。 そこに目を留めるんですな。

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